義歯をつけている方へ
目次
誤嚥性肺炎に注意
今日はお口の健康とも関連する肺炎についての大事な話。
令和4年度の人口動態統計月報年計によると、死因のうち肺炎は4.7%で誤嚥性肺炎は3.6%。
肺炎で亡くなる方のうち95%が65歳以上、その中で7割を占めるのが誤嚥性肺炎です。
参考URL
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf
普段の食事で摂取した食べ物や唾液などの液体は、食堂を通して胃へと流れます。その際に関わってくるのが口腔の役割のひとつでもある咀嚼(そしゃく)と嚥下(えんげ=飲み込むこと)。しかし、これらの機能は年齢とともに低下します。
誤嚥性肺炎は、咀嚼・嚥下機能が弱くなることで飲食物や唾液が誤って肺に入ります。これを誤嚥と言います。
それとともに細菌が肺に入り込むことで引き起こされるのです。ただ、誤嚥が起こるのは飲食時だけではありません。誤嚥性肺炎の多くは、唾液に含まれる肺炎球菌が原因です。そのため、夜寝ている時に唾液が気管支に入り込むことで誤嚥が引き起こされることもあります。
また、誤嚥が起きやすい方は繰り返す傾向もあります。高齢者であれば一部もしくは全部義歯を入れている人も少なくありません。
義歯を入れている人は入れていない人よりも誤嚥性肺炎にかかりやすいというデータもあるほどです。
東北大学でも義歯の清掃頻度と肺炎発症の関連性について研究が行われております。
お手入れを毎日していない人は毎日している人と比べて65歳以上の全対象者で1.30倍、75歳以上では1.58倍発症リスクが上がるそうです。
参考URL
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20191028_02web_ireba.pdf
誤嚥性肺炎の予防には、やはり日頃のお手入れが大切です。
天然歯も合わせて、義歯もしっかりお手入れすることで誤嚥性肺炎のリスクは減らせます。
しっかりとお手入れしましょう。
ちなみに義歯は作ったときの口腔状態に合わせて作っています。そのため、メンテナンスがされていない口腔環境では義歯が合わなくなることも十分にありえます。合わない義歯をしていると誤嚥性肺炎のリスクは上がります。なので、しっかりと検査・治療を行いましょう。
義歯の口腔ケア
もしあなたが義歯を付けてない人でも将来は付ける可能性があります。なので今回の話を聞いて、将来のために健康知識を蓄えておきましょう。では、義歯を付けている人にお伺いします。義歯は、毎日洗っていますか?忙しい時など、つい洗浄を忘れてしまうことはないですか?一見するときれいなようでも、プラーク(歯垢)やバイオフィルム、カンジダ菌(カビ)が付着しやすい環境にあります。実際に歯垢染色をすると染まってしまう義歯が多く見られます。
日常のお手入れを習慣化して、清潔に保ちましょう。
義歯のお手入れ方法
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用意するもの
・義歯専用ブラシ
※なければ歯ブラシでも可
・洗浄剤
・中性洗剤
※液状のハンドソープでも代用可能
・綿棒
・歯間ブラシ
・タフトブラシ
・洗面器
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お手入れ手順
1.洗面器に水を張る
排水口に落とすリスクや落として破損するリスクがあるので、水を張った洗面器の上で洗うようにしましょう。
2.義歯を外して流水で洗う
中性洗剤やハンドソープなどを使って清掃します。
力を入れすぎると歯肉にすき間ができたり傷がついたりしやすいので、できるだけやさしく洗ってください。汚れやすいクラスプ(バネ)・歯間・裏側の内冠などの細かいところは歯間ブラシやタフトブラシ、綿棒で丁寧に磨きましょう。
歯磨き粉を使う人も多いですが、研磨剤が入っているので使わないでください。
就寝前のお手入れ
就寝前は、特に念入りに清掃してください。
1.流水でよく清掃する
義歯用ブラシ・歯ブラシを使って清掃しましょう。
2.ぬるま湯に洗浄剤を入れて漬け置き
洗浄剤で真菌・細菌の除去、通常の清掃では取れない汚れの除去を行います。定められた方法で漬け置きしてください。なお、熱湯は義歯変形の原因になるので、使用厳禁です。
3.義歯用ブラシで清掃
浮き上がった汚れと義歯洗浄剤を流水で洗い流し、その後義歯用ブラシで洗い流します。クラスプがついている歯や入れ歯に接している歯、および歯肉などの粘膜は、歯ブラシや歯間ブラシ、タフトブラシを使って丁寧に磨きましょう。
義歯の手入れを怠ると、、、
義歯のお手入れが十分でないと、下記のようなリスクがあります。
・口臭が発生しやすい
・口内炎の原因になる
・義歯に色素や歯石が沈着する
・部分義歯の周辺にある歯が、
虫歯・歯周病になりやすい
また、口腔状態は加齢とともに変化します。
・義歯が安定しない
・歯肉が痛い
・入れ歯が外れにくい(外れやすい)
などの症状があったら、残っている歯や口腔粘膜の状態も含めて定期検診でチェックしましょう。
就寝時は義歯を外す?つける?
義歯じゃない人も将来つける可能性があります。大事な話なので知識を蓄えて置いてください。それでは、義歯を作る際によく聞かれる質問が、就寝時に義歯を外すかつけたままにするかです。これに関しては患者さんの状態によって変わってきます。
基本的に就寝中は義歯を外したほうがいいです。しかし、場合によっては就寝中もつけたままにするよう指示することもあります。ここでは、基本的に外したほうがいい理由を説明し、つけたままにしたほうがいいケースの一例について解説します。
義歯を外したほうがいい理由
・細菌が増えてしまう
義歯の歯ぐきの部分は樹脂でできています。樹脂は水分を含みやすい性質があり、表面には小さい穴がたくさん。そのため、細菌も繁殖しやすいのです。就寝中は唾液の分泌が減り、口腔内も乾きやすい状態にあります。
唾液が少ない分抗菌作用や洗浄作用が働きにくく、細菌が増えてしまうのです。
・口内炎を防ぐ
入れ歯をつけている際は、歯ぐきの粘膜や顎が圧迫される状態が続きます。
そのため、入れ歯をつけたままにしていると口内炎になることがあります。
痛みでつけられなくなるリスクを避ける目的で外しているわけです。
・飲み込むリスクの防止
部分入れ歯は、1本~数本をカバーするものです。ごく小さなものが多いので、就寝中に誤って飲み込むリスクも。そのため、就寝中は義歯を外します。
義歯をつけたままがいい理由
・残っている天然歯が少ない
残っている歯が少ないと、強く当たってしまうことがあります。
それが原因で義歯が合わなくなることを防ぐために義歯をつけます。
・不安定なかみ合わせ
かみ合わせが不安定な場合、あごに余分な負担がかかることも。
義歯をつけることで口腔を安定させる効果があります。義歯をつけたままにしている場合、起床時に一度外してしっかりと清掃することを忘れないでください。
それでは!
あなたの歯がずっと健康でいられますように。
PS.
最初にも書いたとおり、義歯を外したほうがいいか?つけたままのほうがいいか?については患者さんの状態次第です。
これだけは実際に口腔状態を見てからでないと判断できません。勝手に判断すると、悪化する可能性もあります。
定期検診で状態をしっかりと把握しておきましょう。
「定期検診の予約をしたい」と思ったら、ご予約のお電話をどうぞ。
電話に出たスタッフに「定期検診の予約をしたい」などのようにお伝えいただき、来院日時を決めましょう!
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