歯を失うイメージとその影響、そして定期検診の重要性
こんにちは、春山です。
「歯を失う」ということは、高齢化社会の中で深刻な問題につながりかねません。歯並びや見た目が悪くなるだけでなく、健康な歯への負担増加、噛み合わせの悪化などの悪影響があります。しかし、深刻に捉えていない人も意外と多いのが現状です。そこで「歯を失うこと」について考えてみましょう。
目次
歯を失う理由
「歯を失う理由」と聞いて何を思い浮かべますか? 10~30代であれば虫歯、40代以上になると歯周病と答える人が多いでしょう。8020推進財団の調査でも、歯を失う原因として下記のような調査結果が出ています。
歯周病:37.1%
虫歯:29.2%
ヒビ・欠けなど:17.8%
このうち、ヒビ・欠けの原因はそのほとんどが虫歯由来です。歯を失わなくて済むよう、虫歯・歯周病には特に注意しましょう。
皆さんは歯を失うイメージができていますか?
参考:8020推進財団
https://www.8020zaidan.or.jp/achieve/cause_measure.html
突然ですが、皆さんは歯を失うイメージができていますか? できている人もいれば、想像すらしていない人もいそうですね。日本歯科医師会のアンケートでは、15~79歳の男女1万人のうち、全体で4割弱(37.0%)が歯を失うことを想像できていません。年代別に見ると、10代・20代では6割近くに上ります。30代は半数弱の48.8%、40代は4割(40.5%)、50代以降で見ると50代は約3分の1、60代が2割強、70代で2割弱です。年齢が上がるごとにイメージできない人も減ってくる結果でした。
参考:日本歯科医師会「歯科医療に関する生活者意識調査」 https://www.jda.or.jp/jda/release/cimg/DentalMedicalAwarenessSurvey_R4_11.pdf
歯をできるだけ長持ちさせるためにも、自宅でのセルフケアや定期検診でのチェックをしっかりと活用してください。
治療すればするほど歯質も弱くなります。
・1日3回の歯磨き
・歯間ブラシやフロスでのケア
・定期検診(クリーニングや歯磨き指導など)
歯を長持ちさせるためには、定期検診やセルフケアを入念に行うしかありません。
ケアサイクルに定期検診を加えてみてください。
歯の疾患から全身疾患へ
年齢を重ねても元気に生活するためには、歯・口の健康が大切です。しかし、歯・口の健康を意識する人が増える一方で、“全身疾患との関連”はあまり知られていません。各種データを見ながら、これからできる対策について紹介していきます。
歯・口の健康意識は高い
「健康を維持するために歯・口の健康が欠かせない」と考える人の割合は全体の約9割。「自分の歯を残したい」と思っている人が約92%、「歯・口の健康を大切にしている」と約8割の人が答えており、歯・口の健康意識の高まりがうかがえます。
全身疾患との関連に関する理解は低い
その一方で、歯・口の健康と全身疾患の関連性については理解していない人が多いようです。もっとも理解度の高かった「20本以上自分の歯を保っていれば健康長寿につながる」でも、半数に満たない45.8%。「口の中の細菌によって、循環器・呼吸器疾患などを引き起こす可能性がある」を知っているのが34.3%。「歯周病を放置すると、ウイルス感染しやすくなる可能性がある」は33.0%。これらの認知度は、それぞれ約3人に1人です。
また、高齢化社会において最重要課題となる認知症。「よく噛むことが認知症予防につながる」の認知度が28.3%、「歯の本数が多ければ、認知症になるリスクが少ない」の認知度は25.9%です。「糖尿病になると歯周病になりやすく、歯周病になると糖尿病になりやすい」については21.0%で、約5人に1人しか知られていません。
出典
日本歯科医師会「歯科医療に関する生活者意識調査」
https://www.jda.or.jp/jda/release/cimg/2022/DentalMedicalAwarenessSurvey_R4.pdf
私たち歯科医師も、もっと啓発する必要があると感じます。虫歯・歯周病に代表される歯科疾患が、全身の健康に結びつくことは近年の研究からも明らかです。病気になってから後悔しないよう、日頃からケアしましょう。
歯科の定期検診受診率が上昇中
歯・口の健康意識が高まり、日本でも歯科の定期検診を受診する人の割合が上昇中です。定期検診することで、虫歯・歯周病が減る、QOLが維持しやすくなるなど、多くのメリットがあります。今回は、歯科定期検診の受診率について考えてみましょう。
定期検診の受診率
厚生労働省が実施する「令和4年歯科疾患実態調査」によると、
1年間に歯科検診を受診した人の割合は全体で6割弱(58.0%)でした。
全体の男女比は
- 男性:52.1%
- 女性:63.1%
女性の方が、約1割高くなっています。
調査対象の年齢幅が異なるため単純比較はできないものの、「国民健康・栄養調査」を見ると増加傾向にあることがわかります。
- 平成21年度:34.1%
- 平成24年度:47.8%
- 平成28年度:52.9%
- 令和4年度:58.0%
参考
「令和4年歯科疾患実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html
「平成28年国民健康・栄養調査報告」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h28-houkoku.html
【働き盛りの受診率は低め】
年代別に見ると、10代以下は約8割、60代以上は約6割と歯科定期検診の受診率も高い傾向にあります。
一方、30代は約45%で40代は48.7%と全体より10~13%低い結果でした。
19歳以下の受診率が高いのは、虫歯を持つ人の割合の低下が一因にあると考えられます。
15~19歳のむし歯保有率も93年と比べて半減。
この結果、定期検診受診のハードルも低くなっているのではないでしょうか。
その一方、60代以上では“自分の歯が残っている人が増え”、“虫歯になる人も増え”ています。
虫歯などの治療をきっかけに定期検診も受けるようになったことが一因でしょう。
【歯科の積極的な活用を】
定期検診の目的は、虫歯・歯周病の予防以外にもあります。歯並びのチェックやセルフケアの指導、かみ合わせのチェックなども目的です。仕事が忙しいなどなかなか歯科に行けない人も多いと思います。
健康はなによりの財産です。
できるだけ時間を作って定期的なチェックを実施しましょう。
それでは!
あなたの歯がずっと健康でいられますように。
PS.
日本における予防歯科の普及率は、まだまだ低いのが現実です。
予防先進国と言われるスウェーデンやアメリカでは、定期的に検診を受けることで歯が残りやすいという結果も出ています。他にも「長年通院していない」などの理由でためらう人もいるかもしれません。現時点で状態が悪くても、しっかりと治療した後にメンテナンスを受けることで状態の改善が可能です。諦めずに治療・メンテナンスを行いましょう。
「定期検診・治療の予約をしたい」と思ったら、ご予約のお電話をどうぞ。
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